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第2章

審美歯科最前線 ・2010年5月12日

<よく聞くホワイトニングってどういうもの?>
 美容目的で歯を白くするホワイトニング。特に女性は関心がありますよね。
 歯のホワイトニングは、ブリーチ剤と同じ過酸化水素水で歯を漂白します。これを含むペーストを歯に塗り、光を当てて薬を活性化して漂白効果を高めます。処置後、一時的に酸によって歯が溶けやすくなったり、冷たいものがしみることがありますが、歯が溶けてしまうことはなく、歯が傷むこともありません。
 費用は、ホワイトニングしたい歯の数、回数によって変わり、クリニックによってさまざまです。
 家でできるホワイトニングもあります。高濃度の過酸化水素水を入れたマウスピースを一定期間、歯にはめるものです。歯科で自分に合ったマウスピースをつくってもらい、あとは家で薬剤をマウスピースに入れ、1日数時間マウスピースをはめて歯を白くしていくもので、長期間使用できます。
 むし歯や歯周病がある場合は、治療を済ませてからでないとできません。ホワイトニングは保険診療ではありませんから、費用にばらつきがあります。ホワイトニングに力を入れている歯科の価格や内容をホームページなどで調べてから訪ねてみてはいかがでしょうか。

<美白研磨剤の効果は?>
 着色汚れ(ステイン)除去成分の入った市販の歯磨き粉には、たいてい研磨剤が入っているので、短期間使うのは問題ありませんが、毎日使うとエナメル質が削れてきてしまうというデメリットがあります。

<セラミックのかぷせって?>
 ホワイトニングで歯の白いところはもとの白に近づけることができても、その白さは永遠のものではないし、むし歯の治療あとの銀はもちろん白くすることはできません。そこで注目されているのが、歯を丸ごとすっかり白くできる「セラミックのかぶせ」です。
 特に、目に見える部分の歯は、美的な観点から、やはり白い歯を求める方は少なくありません。
 セラミックのかぶせの場合、歯の色を白くするだけでなく、すきっ歯など気になる歯の形状を修正することも、よじれている歯をまっすぐにする、かみ合わせの悪い奥歯の状態を改善するといった歯の位置の調整も可能です。

★治療時間は1本1時間以内
 私のクリニックで使っているセレックという最新型の機器を使ったセラミックのかぶせの行程をご紹介しましょう。
①白くしたい歯の部分を削ります。歯の表面を白くしたいなら歯の全周を1mm程度削ります。
②赤外線カメラで歯の形状を撮影してパソコン上にとりこみます。
③3Dで映し出された画面を見ながら、歯の形に合わせて形や位置の調整をし、歯のデザインをプランニングします。
④できあがったデザインデータをセラミックを削る機械に転送すると、機械が人工歯を仕上げます。かぶせの素材はセラミック。色は自然な歯の色に合わせ、数種の象牙色があります。
⑤できあがったセラミックのかぶせを特殊な接着剤で歯に固定し、磨きをかけます。
すべての行程は1時間以内でできます。他の審美歯科治療と同じように保険適用外ですから、費用はクリニックによってさまざまです。私のクリニックでは1本5万円から。オールセラミックは、東京都内で12~20万円というところが多いようです。
★耐久性、安全性もクリア
 保険治療でする金属の詰め物の場合、金属との接合部は口の中でだんだんと溶けてしまうので、つぎめからむし歯になりやすいのですが、プラスチックで接着すると、つぎめがないのでむし歯になる心配もありません。
 また、歯髄を失ったむし歯の場合、保険治療ではクラウンを選択しますが、その際、土台部分は金属のピンを使います。このピンもやはり次第に溶け出し、残った歯根にも影響するので、実際には3~4年しかもたないというのが現状です。
 しかし、セラミックのかぶせの場合はピンはグラスファイバー製で溶け出すことはなく、歯根をいためることもありません。
 数本をかぶせるなら、通院した日にすべての歯のかぶせを完了できる気軽さも喜ばれています。

口内炎、口臭など口腔のトラブル ・2010年5月11日

◆口内炎ができた
 口腔粘膜―舌、頬の内側、口唇(上顎)、歯肉にできる炎症が口内炎です。口腔粘膜そのものはとても強く、固いものも受け入れられるクッション性がありますし、傷ができても治りやすいという特徴があります。
★アフタ性口内炎
 一番多いのはアフタ性口内炎で、多くは原因不明です。大きさは粟粒から米粒くらいで、白っぽい縁取りの水ぶくれのようになります。組織が欠損してしまうので強い痛みがあります。原因は口の中が傷ついたりしてそこからできること、ビタミン不足などがあげられます。
 そのままにしていても1週間ぐらいでよくなりますが、長引くときや症状が強いときには、歯科を受診して口腔軟膏を処方してもらいましょう。
★ヘルペス性口内炎
 アフタ性口内炎が複数集まってできている場合は、ヘルペス(単純庖疹ウイルス)の感染による可能性があります。また、ほとんどの人は子どもの頃に水ぼうそう(帯状庖疹ウイルス)にかかるので、大人になって体調を崩したときなどにこれによる口内炎の発生を見ることがあります。口の中を清浄殺菌して口腔軟膏をつけます。


◆口臭がする・口が乾く
 口臭は、むし歯や歯周病などの歯の病気があって、その原因である細菌によるものがほとんどです。その場合、むし歯や歯周病の治療をして、口の中を清潔にすれば口臭は消えます。ほかに舌苔(舌についている白っぽい黄色の苔のようなもの)にカンジダ菌(カビの一種)がついて増えると口臭がすることがあります。
 また、口は消化器官、呼吸器官の出入り口なので、胃腸の病気がある場合、耳鼻科の病気がある場合にも病気の組織の炎症から口臭を発することがあります。
★唾液が少ないと口臭がしやすい
 口が乾いて唾液の分泌が少ないと、口臭を発することがあります。ふつうは口の中の常在菌が分解した残がい物は唾液によって流されますが、それができないため、口の中が酸性に傾くからです。唾液は交感神経が緊張状態にあると分泌が少なくなりますから、唾液がよく分泌されるよう体調を整えることも大服です。
 口の中に含むタイプの液状のマウスウォッシュには殺菌剤が入っているので、口臭を防ぐ効果が期待できます。


◆味覚を感じない
 口の中が苦い感じがする、おいしく感じないといって受診する方がいます。認知症などが原因で味覚を感じにくくなった場合を除けば、唾液の分泌が悪くなって口の中が乾燥している、舌苔にカンジダ菌が増えた、歯周病で膿が出ているなどが考えられる主な原因です。亜鉛不足が味覚に影響するといわれていますが、薬の中には亜鉛の摂取を妨害するものがあり、薬剤が原因で味覚障害となるケースもあります。
 味覚と嗅覚は、舌や鼻の粘膜にある受容器が、臭いのもとになる分子が接触したことを検出して感じるしくみ。たとえばカレーを食べたときは、汁や空気が舌と鼻に達して受容器にふれ、発生した神経信号が脳に達して、脳がカレーの味覚を分析して感じるわけです。かせなどで体調を崩したときに、味を感じにくくなったことはありませんか? これは、喉や鼻の炎症で受容器の一部が使えなくなっているためです。
★入れ歯は味覚障害も引き起こす
 味覚を感じるには、舌だけでなく、口唇(上顎)を含むアゴの粘膜の感覚も重要です。ですから、総入れ歯などを上の歯に入れると口唇にフタをしてしまった状態となり、味覚の神経信号がうまく働かなくなって食べ物がおいしくなくなるのです。口唇を含むアゴの感覚を失うことのないインプラントは、この点からも注目されています。


◆歯・口の中のケガ
 歯をぶつけて欠けたり、折れたりといった歯や口のケガも歯科での扱いとなります。
特に赤ちゃんやお子さんのいる家庭では、救急手当法も覚えておきましょう。
★歯が折れた、抜けた、グラグラになった
 転んだりぶつけたりして歯が折れたり、抜けたり、グラグラになったときには、しめらせたガーゼか清浄綿などで汚れをぬぐい取ったあと、ガーゼなどをかんで止血しながら歯科を受診しましょう。抜けた歯は子どもならくっつくこともあります。水で洗ってから濡れタオルで包んで持参してください。
★歯が欠けた
 欠けた歯はそのままにしないでください。象牙質がむき出しになって、むし歯と同じ状態です。早めに歯科を受診してください。
★唇や口の中をケガした
 うがいができればしてから、ガーゼか清浄綿で汚れや血液をぬぐい取り、出血している部分をガーゼなどで押さえて歯科へ行きましょう。

歯がしみる(知覚過敏)

 歯周病が進行すると歯肉が後退して、歯の根のところが露出してきます。歯のエナメル質は、歯肉に近づくほど薄くなっているので、歯と歯ぐきの境目を歯ブラシでゴシゴシ磨いていると、エナメル質がすり減って象矛質がむきだしになってしまいます。象牙質はエナメル質と違ってやわらかく、歯ブラシの力だけでもすり減ってしまうのです。
 象牙質には神経が通っているので、こうなると、熱い物や冷たい物の刺激でしみることがあります。くさび状にすり減ることから、これを「くさび状欠損」と呼んでいます。
 歯肉が下がるとしみるので歯磨きがおっくうになりますが、歯垢がたまると歯周ポケットができてさらに症状は悪化してしまうので、ふだん通りにきちんと磨きましょう。症状が強いときは、歯科で薬を塗ってもらうことで症状が緩和されます。

歯が浮いた感じがする・グラグラする

 歯肉に隠れた歯の部分は骨と直接くっついているのではなく、歯根膜という膜におおわれています。歯根膜は歯と歯の骨の間にあるクッションのようなもの。歯が浮いた感じがするとかグラつくといった症状は、この歯根膜の毛細血管が腫れて炎症を起こしている状態です。歯根膜はごく薄い繊維質で、周りは歯の骨で囲まれているので、腫れるとふくれあがるスペースもなく、歯を持ち上げた状態に。それで歯が浮いた感じがするのです。
 原因としては、固いものを継続的にかむことや、疲れやストレスから歯根膜の血行が悪くなることがあげられます。疲れからくるものは、筋肉の血行が悪くなって肩がこるのと同じようなものですから、しっかり休養をとれば治癒します。なかには、むし歯や歯肉炎、歯周病で歯がグラつくこともありますから、症状がおさまらない場合は歯科を受診してください。

歯の色が黄色い・汚れている

 いつまでも生まれたときのような白い歯でいたいものですが、やはりそうはいかず、歯の色はだんだんと黄ばんでいきます。
 歯の色が黄ばんでくる原因の1つは加齢。歯の一番表面をおおうエナメル質は年齢とともに次第に薄くなります。その下の象牙質層は黄色なので、色が濃く見えてしまうためです。
 もう1つは、コーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、コーラ、赤ワインなどの飲み物のほか、ラズベリー、ブルーベリー、ブドウ、カレーなど色の濃い食べ物の着色成分が歯につき、だんだんとエナメル質に染み込んでしまうことからです。このほかタバコのヤニも黄ばみのもとになるのはご承知のとおりです。
 歯の治療で神経を抜いてしまったために歯の色が悪くなるのは、象牙質まで栄養がゆき届かなくなるというからだの内側から起こるものです。テトラサイクリン系の抗生物質の影響でも歯が黄ばむことがあります。
 着色汚れがエナメル質に染み込む前なら、それは歯についた汚れですから、日ごろの歯磨きで予防できます。ステイン(着色汚れ)除去効果のある歯磨き粉が市販されているので、使ってみるのもよいでしょう。歯科では清掃器具を使って磨くことができます(スケーリング)。定期健診のときにはスケーリングも行うのが一般的です。
 エナメル質の中まで染み込んだ汚れは、ホワイトニングという審美歯科の領域になり、さまざまな最新治療があります。

顎関節症

アゴのトラブルの治療法

「顎関節症」という言葉をよく耳にするようになりました。顎関節症とはどんな病気か、まずは主な症状をあげてみましょう。

◆顎関節症の主な症状は?
★アゴが痛い
 固いものを食べたとき、口を開け閉めしたときにアゴやアゴの周りに痛みを感じます。口をちょっと動かしただけで痛んだり、何もしなくても痛みを感じることもあります
★口を大きくあけられない
 大きなあくびをしたり、大きな□を開けてリンゴを丸かじりにできません。目安として人さし指から薬指までの指3本を口に入れられない状態です。
★アゴが疲れる
 食べ物をかんだり、しやべっているとアゴが疲れてだるくなってきます。
★口を開けると音がする
 口を開け閉めすると耳の前の部分でカクッという音や、砂利をふんだときのような耳障りな音が聞こえます。
 このほか、顔面や肩の痛み、頭痛の症状が見られるなど、直接顎関節に異常を訴えない場合もあります。

◆意外と身近な顎関節症の原因
 顎関節は下顎(下アゴ)を動かすための関節で、耳のすぐ前にあります。耳の前に指を当てて、大きく口を開けると動く部分です。口を開けると下顎の丸い突起が回転して、だんだん頭の骨のくぼみに沿って前方に滑り出していくしくみになっています。
 頭の骨のくぼみと下顎の丸い突起の間には関節円板というクッションがあって、これがアゴの動きをなめらかにしたり、圧力を吸収しています。下顎を動かすのは、こめかみや頬の周りにある咀嚼筋。食べる、しゃべるなどの複雑な運動ができるのは、これらの骨や筋肉が協調しあって動くからなのです。
 顎関節症は、アゴの関節がスムーズに動かなくなった状態で、次のようなアゴの異常活動が原因となり、関節の内部に異常が起こることで発症します。
★歯ぎしり
 歯ぎしりは自分で気づかないことが多いものですが、浅い眠りをしているとき(夢を見ているとき)にすることが多いといわれてます。ストレスや睡眠時無呼吸症候群と関連があるという説もありますが、はっきりした原因はわかっていません。強い歯ぎしりでは、歯の表面が削れてしまい歯がすり減るようなこともあります。継続的に歯に力が入ることによって、歯と骨の間にある歯根膜がダメージを受けるので、歯周病の原因になることもあります。
★くいしばり
 くいしばりは、知らないうちに必要以上に強く歯をかみしめること。原因ははっきりしていませんが、ストレスが関連することもあるようです。
★かみ合せの異常
 歯が欠けたままになっていたり、かぶせた物がうまくかみ合っていない、アゴを強く打ったなどの理由でかみ合わせが悪くなると、一部分だけでものをかむようになる  ので顎関節症を招くことがあります。
★入れ歯
 入れ歯を入れると、正常な人に比べてかむ力がでないため、同じ食事をしていてもより長時間の咬合運動が必要になる、つまりアゴやアゴの周囲(首、頭、背中など)の痛みを発生させることがあります。

◆マウスピースを装着する治療をします
 筋肉の緊張をやわらげるため、上顎にスプリントと呼ばれるマウスピースを入れる治療を行います。歯ぎしりやくいしばりを減らす目的なので、原則的に口に入れられるときはなるべく長時間入れるようにします。これを数か月~1年間続けて改善を待ちます。
 しかし、マウスピースを入れて動かさないようにするのは、足をくじいたら安静にして炎症が鎮まるのを待つという考え方で、根本的な治療ではありません。マウスピース自体、口内で異物感が強く、入れられない人も多くみられるため、私のクリニックではつぎに述べるラエンネックという薬剤を使用することが少なくありません。
 マウスピースを装着する以外にも、大きな口を開けずアゴの安静を保つ、できるだけよい姿勢を保つ、寝るときはアゴに負担がかからない横向きか仰向けで寝る、温湿布をする、口を開ける練習をする、筋肉のマッサージをするといったケアを同時に行いましょう。

◆顎関節症の治りを早めるプラセンタ

人や生物を原材料にした薬剤を生物製剤といいます。ヒトの胎盤からエキスを抽出してつくった生物製剤「プラセンタ」は、1974年から肝硬変治療や肝機能改善のための薬として使われてきた薬です。発売から30年以上たっても重篤な副作用の報告はなく、厚生労働省の認可を受けた注射薬です。
★各種グロースファクターが人間の修復力を強化
 プラセンタの原料となる胎盤は、10か月で胎児を新生児にまで成長させる驚異的な力をもっています。ほかのからだの組織や臓器には含まれない細胞増殖因子やサイトカインやリボ核酸などのさまざまな活性物質をさかんに合成・分泌し、これらを妊娠期間中ずっと赤ちゃんに与え続けているからです。この特性は薬となっても効果を表すことがわかり、古くから肝臓の薬として使われてきたプラセンタですが、最近では、美肌効果があるという美容面で見直されているようです。
 美容効果のある薬を歯科治療でなぜ? と思われるでしょう。実はプラセンタのもつ活性成分は、顎周囲にある三叉神経などの神経痛をやわらげたり、筋肉痛や顎関節症、ヘルペス、また、手術後の治りを早めるすぐれた効果があるのです。ラエンネック(製品名)という薬を私のクリニックでもご希望により使用しています(自由診療)。
 プラセンタの薬理成分であるグロースファクターの働きにより、本来人間が持っている自身の修復する力を強化することで、関節軟骨節の修復作用、鎮痛作用、血行の改善による不定愁訴の改善が期待できます。顎関節症の場合、筋肉注射か皮下注射で、週に1~2回を2か月ぐらい続けます。2~3回の治療で、アゴが楽になったという症例もみられます。
★感染症の心配は? 安全性は?
 人の胎盤からとった生物製剤ですから、感染症などを心配される方もいますが、薬に使用されているのは、日本国内で満期正常分娩で出産された胎盤を原料とするもので、妊娠中に妊婦さんに行う血液検査でウイルスなどに感染しているものは除外されます。また、工場での製造段階でB・C型肝炎、エイズ、白血病、りんご病のウイルスについては改めて検査されています。また工程の最終段階で、高圧蒸気滅菌を行い、製品試験で病原物質についての確認試験が行われるといった安全対策を経て出荷されています。

歯肉炎

歯ぐきが腫れた・血が出た

歯ぐきがブヨブヨと腫れて充血し、ちょっと歯磨きをしただけで出血する症状を歯肉炎といいます。歯肉炎の原因もむし歯と同じ細菌から生まれる歯垢、歯石です。口の中にはいろいろな細菌が住み着いてます(常在菌)。きちんと歯磨きをしていれば、細菌が歯ぐきに悪さをすることはまずないのですが、歯磨きが不十分だったり、糖分の多い食品を多量にとると細菌が増殖して活発化し、からだとのバランスが崩れ、歯のまわりを包み込んでいる歯肉に炎症が起こります。

◆歯周ポケットができると?

 歯肉炎が起きると、歯と歯ぐきの間に歯周ポケットと呼ばれる溝ができます。歯肉炎は細菌そのものが引き起こすむし歯と同様に、細菌がつくり出す酵素や毒素が歯肉に影響していると考えられています。歯肉炎は痛みを伴うことが少ないため、放置されがちですが、この歯肉炎が進んで歯周ポケットが深くなっていくと、歯を支える骨まで壊されて歯周病に向かいます。
 「なんとなく歯ぐきが腫れてむずがゆい」とか「りんごなど硬いものをかんだり、歯磨きのときに血が出る」などの症状がみられたら、早めに受診しましょう。

◆歯石除去と歯磨きの徹底

 歯科で歯石をとってもらうと、歯ぐきが正常な状態にもどります。また家でしっかりていねいにブラッシングをすることが、歯肉炎の再発や、やっかいな歯周病の予防につながります。

◆歯肉炎力起きやすい時期
 大人になるためのホルモンが体内に多く流れる思春期や、女性ホルモンの分泌が活発になる妊娠中は歯肉炎が起きやすいようです。これは、歯周ポケットに入ったホルモンが細菌の活動を活発にさせ、細菌の力を増大させるからだといわれています。また、薬の副作用、血液疾患などが歯肉炎を招く場合もあります。

むし歯

日本人のむし歯の数は世界有数

地球が誕生したのが46億年前。酸素がなくても生きられる細菌は30億年前にはもう存在していて、だんだんとその種類を増やしてきました。細菌のなかには人間が生きていくのに欠かせない細菌もありますが、ブドウ球菌、大腸菌、コレラ菌、結核菌などは病気の原因になり、ときには生命を奪う病気の原因となる細菌もいます。

歯の組織
歯の頭(歯冠)と歯の根(歯根)の境目はエナメル質が薄くなっています。歯垢が入り込んで歯と歯ぐきの間(歯周ポケット)を広げないように、正しいブラッシングで歯垢を取り除きましょう。

◆ むし歯の原因になる「細菌」は10種類
 
 このような病原細菌は、外から体に侵入して感染したり、体の中に住み着いていて、体調が落ちたときなどに仲間を増やしてあばれ出し、病気をひき起こします。
細菌は千倍の顕微鏡で見ても1mm程度にしか見えない大きさ。でも、インフルエンザウイルスなどに比べれば大きい生物です。きょう膜という防護壁でおおわれていて、白血球に退治されないしくみになっています。また多くの細菌はべん毛があって、動き回るのが上手です。また、毒素を武器に体の組織をねらう細菌もいます。

★むし歯菌はどこから生まれるの?
 人はこの世に誕生したときから、さまざまな細菌にさらされ、細菌も口の中にも住み着くようになります。口の中にいる細菌の種類は300種以上ともいわれ、お母さんの口の中にいた細菌が赤ちゃんにうつります。そのなかでむし歯を引き起こすむし歯菌はミュータンス菌など約10種の細菌です。
 むし歯菌は砂糖をエサにして、グルカンという物質をつくります。これはネバネバした物質で歯の表面にべたっと貼りつきやすい特徴をもっています。そのうえ水に溶けないので、うがいややわらかい歯ブラシでブラッシングする程度では落とせません。このグルカンのなかでいくつかのむし歯菌が結びつき、数時間で塊となったものが歯垢(デンタルプラーク=歯に付着するもの)です。
 ブラッシングで落とせなかった歯垢は増殖を続けて石灰化し、歯石になってしまいます。歯石はブラッシングでとれるものでなく、歯と歯ぐきの問(歯周ポケット)に住み着いて溝を大きくし、歯周病の原因にもなるのです。

◆むし歯のできる要因を知っておこう

むし歯や歯周病(第3章参照)は、結核菌から結核になる、のどに細菌がついて扁桃炎を起こす、尿道から細菌感染して腎孟腎炎を起こすといった感染症と同じで、むし歯菌による感染症だと考えてよいでしょう。
 歯垢が歯の表面に住みついていることに加え、そこでつくられる酸が歯を溶かし始める、歯質が弱い、むし歯菌の栄養となる糖分の摂取によって歯を溶かす酸がつくり続けられるといった状況が一定時間以上続くという要因が重なって、むし歯ができ始めるのです。

★むし歯のできやすい場所、できやすい人
むし歯が最もできやすいのは、歯の溝や歯と歯がくっついている部分など、ブラッシングで歯垢が取りにくいところです。大人の場合、むし歯を治療したときに入れた詰め物やかぶせ物と歯の間からむし歯が進むことがよくあります。詰めものやかぶせものには変化は見られませんし、神経を抜いていれば痛みも感じないので、気づいたときにはかなりむし歯が進んでいるということもよくあります。
 またむし歯ができやすいのは、口の中にいるむし歯菌の数が多い人です。これは体質の問題なので、どうしようもありませんが、適切なブラッシングでむし歯菌を減らすことは可能です。

◆むし歯はどう進むの?どんな治療をするの?

 むし歯のはじまりは、歯の表面にツヤがなくなって、白くなったり薄い茶褐色になることでわかります。この段階では、きれいに歯垢を取ったり、フッ素を塗ることでむし歯の進行をくいとめます。

★C1-エナメル質のむし歯
 歯の表面をおおうエナメル質だけに限定しているむし歯で、痛みはありません。歯に小さな穴ができ、茶色に変色したりや黒っぽくなります。むし歯の部分を削り、プラスチックの詰め物をします。エナメル質はとても硬いので、ダイヤモンド粉で固めたやすりで削ります。歯は削ったらもう元には再生されません。

★C2-象牙質に達したむし歯
 むし歯が象牙質まで達したもので、冷たいものや熱いものでしみたり痛みを感じたりします。口に見える状態はC1と似ていて、歯に穴があき、茶や黒っぽくなります。C1と同様にむし歯の部分を削り、プラスチックの詰め物をします

★C3-歯髄に達したむし歯
 歯髄は歯の中心部にあり、歯槽骨とつながっている神経と多数の血管を含む組織で、歯に血液を送り、歯の健康を維持しています。
 むし歯が歯髄に達すると、歯はズキズキと痛みます。表面のむし歯の穴はそれほど大きくないのに、奥で広がっていることがあります。むし歯の穴から細菌が増殖するので、口臭がすることもあります。
 歯髄の炎症がひどくなければ感染した組織を除去するため、歯髄を取り除きます。そしてむし歯でなくなった部分の歯の型をとってかぶせ物(クラウンという。)を行い、かみ合せを調整します。

★C4-根だけが取り残された状態
 見える部分の歯がほとんどなくなるほどに進行したむし歯では、すでに神経は死んでいるので、痛みを感じません。放っておくと細菌は血液中に入り込んで健康をおびやかすので、歯の根の状態によっては歯を抜くことになります(失った歯をどうするかは第5章を参照)。根を生かせる場合には差し歯(P36参照)を選択することもあります。

◆むし歯に気づいたら早めに治療することが大事

 ほんの少し白くなっている程度の初期のむし歯は、削らずに治せる場合もありますら、黒くなったり茶色くなったりする前、痛くなる前の早めの受診が大切です。
 むし歯が深く広がってから削って詰めた場合、歯髄が死んで炎症が起こり、膿の袋ができることがあります。こうなると歯髄を生かすことは難しくなります。
 むし歯は、できないようにケアするのが大前提ですが、もしできてしまったら、なるべく早く歯科を受診して、症状をくいとめることが大切です。

◆ 予防の基本はブラッシング歯石は歯科で取りましょう

 第1章で、正しいブラッシングをはじめ、毎日の生活でできるむし歯予防の方法を述べました。それに加えて、歯の健康診断を定期的に受けることをすすめます。
 歯垢の中の細菌が唾液の中のカルシウムと結びついて、固くなって層状に育ったものが歯石。これはブラッシングだけでは取れないので、定期健診時に歯科で取ってもらってください。
歯科医はスケーラーという器具で歯石を除去します。歯石を放っておくと、細菌感染が歯の骨まで広がって、歯周病を進行させることになります。むし歯菌は家族にもうつるので、定期健診は家族みんなで行いましょう。

◆むし歯の治療の種類(詰め物・かぶせ)
 むし歯は、歯の組織の一部を失うということですから、まず、削って詰め物をしたり、メタルやセラミック(陶器)をかぶせて修復し、歯の機能を回復させるというのが基本的な考え方です。修復方法は、歯の場所や状態などによっていくつかの方法があります。その代表的なものをご紹介しましょう。

・アンレー/インレー
 歯の一部を残してほとんどかぶせるもの。内側から処理した詰めものをインレーと呼ぶのに対し、外側からの処理ということでアンレーと呼んでいます。かぶせ物には、メタルやセラミックがあります。アンレーは基本的に保険適用外です。

・クラウン
 むし歯が大きい場合、神経を抜いた歯が弱ってしまった場合などは、詰めるよりはかぶせて歯を長持ちさせることがあります。歯の外側にかぶせ物をすることをまとめてクラウンと呼び、いくつかの種類があります。材質によっては保険適用外。歯の根だけになった歯にクラウンをかぶせるときは、歯の根に深く穴を開け、そこに金属のピンを立ててプラスチックで固め、歯の土台をつくってからクラウンをかぶせます。金属を溶かしてつくるメタルクラウン(素材によっては保険適用外)、セラミックだけでつくるセラミッククラウン(保険適用外)、フレームを金属でっくり、見える部分にセラミックを焼きつけてつくるメタルボンドポーセレン(保険適用外)などがあります。

・前装冠
 表面に硬質レジンというものを貼りつけてつくるクラウン。前歯には保険が適用されます。

・差し歯(ポストクラウン)
ピンと歯が一体になった人工の歯を、歯の根に空けた穴に差し込んで治す方法です(保険適用)。昔はよくやられていましたが、歯肉まで削り落とすことになり、力がかかると歯が破損するので、最近では見られなくなりました。